
この映画は、2001年に石田衣良氏が小説の発表を終えた後、幾度となく映画化しようと試みがありました。しかし、森中領を演じきれる俳優が見つからないことから、なかなか実現しませんでした。
十余年の時を経て、『松坂桃李』が現れます。容姿がとても美しく、かつ過激な性描写があってもなお人々から愛される役者との出会いが、この作品の映画化を実現させました。
一見ただの官能小説の映画化のように思えますが、どこか懐かしいような、思わず見惚れてしまう映画です。女性の間でまたたく間に話題となった作品となりました。
娼年のあらすじ
主人公の森中領(リョウ)は、容姿端麗で物静かな大学生。世の中をどこか俯瞰して見ているような、異性は愚か、自分自身にも興味がない青年です。
大学へはほとんど行かず、いつものようにバーテンダーの仕事をしていました。そこへ、地元の同級生の田島進也(シンヤ)と御堂静香(シズカ)が来店します。
初対面にも関わらず、リョウとシズカはお互い何かを悟ります。
シズカは、男性が女性に性的サービスを提供する『Le Club Passion』のオーナーでした。帰り際にシズカが残していったメモに、「営業終了後、外で待っている」との記載がありました。
シンヤとシズカがバーから出ていく際、シズカの後ろ姿を見るなり、ふとリョウの幼い頃の記憶が蘇ります。それは、リョウの母親らしき女性が、自宅のドアから姿を消すところでした。
リョウは、なぜ急に母親の姿を思い出したのか分からず、少し動揺します。
バーの仕事を終えた後、リョウはシズカの元へと向かいます。
リョウはシズカと落ち合います。リョウは、「女なんてつまらないよ」という言葉を発します。この言葉を聞いたシズカは、自身の経営する『Le Club Passion』にリョウを連れて行きます。
そこで待ち受けていたのは、素朴な姿の1人の少女でした。彼女の名前は咲良(サクラ)。シズカはリョウに、この少女とセックスをするように強要します。
シズカはリョウに『娼夫』になる資格があるか、2人の性交渉を見て試験をします。
リョウは自己の快楽のために、サクラに乱暴なセックスをします。シズカはその自分本意な性行為を見て、リョウに『不合格』を告げ、5000円を手渡します。
しかし、サクラが5000を追加で支払い、辛うじて『合格』を手にします。
そして、リョウは『娼夫』となった。なぜシズカはリョウを夜の世界に導いたのでしょうか。この映画は、リョウが『娼夫』になった理由と、彼を取り巻く人間によって心身ともに成長していくリョウの物語です。
作品概要
作品公開 | 2018年4月6日 |
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監督・脚本 | 三浦大輔 |
原作 | 石田衣良「娼年」「逝年」集英社文庫 |
キャスト | 松坂桃李・冨手麻妙・猪塚健太・桜井ユキ・小柳友・馬淵英里何・荻野友里・佐々木心音・大谷麻衣・階戸瑠李・西岡徳馬・江波杏子 |
「娼年」のキャスト役
- 森中領:松坂桃李
- 20歳の大学生。人生をつまらないと思っている。女性にもセックスにも自分自身にも興味がない。アルバイトでバーテンダー店員をしている。
- 御堂静香:真飛聖
- 40代で会員制ボーイズクラブのオーナー。『Le Club Passion』は、男性が女性に性的サービスを提供するクラブ。
- 咲良:冨手麻妙
- 『Le Club Passion』で働く女性。男性が採用される際にオーナーによる「セックスのテスト」が実施される。その際の相手役。生まれつき耳が聞こえず、言葉も話せない。
- 田島 進也:小柳友
- 領の中学生時代の同級生。自信家で調子が良い。ホストをしている。いつも上から目線でものを言う。
- 平戸 東:猪塚健太
- 圧倒的人気No.1の娼夫。爽やかで物静か、両性的な顔立ち。過激な痛みに快感を感じるマゾヒスト。
- 白崎 恵:桜井ユキ
- リョウの大学の同級生。リョウに好意を持ち、大学を休みがちのリョウに授業のノートを見せて世話を焼いている。
「娼年」の感想
性別問わず人気絶好調の『松坂桃李』が、R 18指定の映画に出演すると言うことで、男友達に誘われて観に行きました。想像していた以上に、官能的かつホラー要素満載の映画でした。
冒頭20分でリョウ(松坂桃李)とサクラ(冨手麻妙)の濡れ場が出てきます。
女性視点のカットに、思わず自分が抱かれているかのような錯覚を起こしました。『子宮が疼く』という経験をしました。
このシーンの後、リョウ(松坂桃李)はたくさんのクライアントを満足させます。それぞれの性癖がある顧客を相手に、リョウは一身に応えて行きます。
この映画の撮影に伴い、松坂桃李は「たくさんのA Vを観て、腰が砕ける程練習をした」と言います。
それぞれの「性交渉」に、松坂桃李の演技力が滲み出ています。この映画は、内容もさながら「演技」も見どころです。
愛情が欲しい、痛みが欲しい、スリルが欲しい、背徳感が欲しい…
クライアントが求める「性交渉」のなかに含まれる「本当の要求」を、リョウは見極めて行きます。
官能小説の映画化と思いきや、自分の人生観やセックスのあり方について深く考えさせられる映画でした。